不動産投資成功の可否は、出口戦略によって決まります。出口戦略とは、不動産投資をどのように着地させるのかを検討することです。
ワンルームマンション投資の場合、物件購入の前に出口戦略をたてておくことが重要です。購入時に物件選定で失敗すると、不動産投資の主な出口である「売却」時点で、思惑通りの収益を得られないためです。
この記事では、いずれ売却する場合の出口戦略として、物件選びのポイントや売却のタイミングについて解説しています。
物件購入前から出口戦略を見据える投資家の皆さまに、ぜひ読んでいただきたい内容です。
ワンルームマンション投資において出口戦略が重要である理由は、現代の不動産価格の仕組みにあります。
戦後からバブル経済崩壊までは不動産価格の上昇が続き、その時期の投資家は何も戦略がなくとも売却で利益を出すことができました。
しかし、バブル経済崩壊以降、売却額が購入額を上回る着地は見込めない状況が続いています。現代では、購入時を上回る価格で不動産を売却できることは、まず考えられません。建物の築年数に応じて不動産価値は下がっていきます。
だからこそ、出口戦略は不動産投資を成功させるために欠かせません。
例えば、出口戦略を考慮せず、入居者がつきやすいことを理由に新築マンションを購入させられてしまうと、投資の失敗につながりやすくなります。
新築マンションは、「新築プレミアム」と呼ばれる広告宣伝費や不動産会社の利益などが上乗せされ、特に高い値で販売されています。
ところが、売却時には中古物件の扱いになるため大幅に物件価値が下落してしまい、損益が出るケースが珍しくありません。
あらかじめ、物件購入前に出口戦略を練っておけば、損益を最小限に抑えられます。
ワンルームマンション投資を始める際は、出口戦略を意識した物件選びが重要です。
出口戦略を見据えた物件選びのポイントを3つご紹介します。
ワンルームマンション投資の出口を売却とするならば、売却時に十分な価値を残せる物件を選びましょう。その際、価値を判断する「投資家」の目線が重要です。
収益を上げることが目的である投資家にとっての価値とは
・物件の状態
・立地条件
・空室率
・利回り
などが挙げられます。
物件を選ぶ際には、売却する数年後や数十年後のこれらの条件を想定することが重要です。
売却時の価値を残すためには、入居者がつきやすいことが条件になります。
常に入居者がいる状態を維持できれば、安定した利益が得られ売却時にも空室率が低い物件として売り出せます。
そのためには、入居者にとって魅力的な物件でなければなりません。
ワンルームマンションの入居者にとっての魅力的な条件とは、
・駅が近い
・大学や職場に近い
・スーパーやコンビニが利用しやすい
・メンテナンス状態が良い
・大手メーカー建設物件である
・家賃が高すぎない
などが挙げられます。
入居者の目線で、住んでみたいと思える条件かどうかをイメージしてみましょう。
物件購入価格にもよりますが、納得感のある家賃設定で利回りを検討することも重要なポイントです。
出口戦略を検討するにあたり、将来の人口動向を把握することが大切です。
日本の人口は緩やかに減少傾向が続いており、物件を売却する予定の数年後や数十年後は、日本の総人口が現在よりも減っているでしょう。
そのため、将来においても人口を維持できるかどうかを視野に、立地条件を考える必要があります。
大きな都市圏に近いなど、人口減の影響を受けづらい立地を検討しましょう。
ワンルームマンション投資で最終的に手元にどれだけ利益を残せるかは、売却のタイミングにかかっています。不動産は、売却するタイミングによって物件価格に大きな差が出るためです。
高く売却できるタイミングをあらかじめ把握することで、出口戦略を立てやすくなります。
売却に適したタイミングを見極める3つのポイントをご紹介します。
損益分岐点とは、収入と支出の額が等しくなる点を意味します。
不動産投資においては、それまでに獲得した家賃収入の合計が、購入価格と売却価格の差を埋められる点が損益分岐点です。
家賃収入の合計が損益分岐点を上回っていれば、投資成功とみなされます。
この損益分岐点を上回るために、いつまで保有すべきかを知るには、売却相場を把握しておく必要があります。
周辺の物件動向を元に、
・現在時点でどのくらいの売却額が望めるのか
・築年数によってどのくらい下落しているか
・家賃はどれくらい下落していくか
などを確認しましょう。
その上で、損益分岐点を上回るには、どのくらい家賃収入を積み立てるべきかを見込んでおきましょう。
周辺の物件動向と同時に、近い将来に周辺で不動産価格が大きく変動しないかも把握すべきです。
損益分岐点から売却時期を想定していても、不動産価格が下がりすぎてしまっては意味がありません。
物件価格や家賃相場に影響する要因とは
・近隣に新しい駅や路線ができる
・大きな商業施設ができる
・競合となるマンション建設が見込まれる
などが挙げられます。
投資成功のためには、物件価格が大幅に下落する前に売却できるかがカギとなります。周辺状況に詳しい不動産業者をパートナーにするなど、いつでも情報収集できる状態にしましょう。
売却を前提に不動産運用を行うために、必ず知っておくべき条件が法定耐用年数です。
法定耐用年数とは、 税法上、建物や設備が使用できると見込まれる期間のことで、この数字を元に金融機関から融資できる上限が決まります。
残りの法定耐用年数が少ない物件は、長期のローンを組むことができないため、買主がつきにくくなる可能性があります。
法定耐用年数は、以下の通りです。
建物の構造 | 法定耐用年数 |
軽量鉄骨造 (骨格材の厚みが3mm以下の場合) | 19年 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造 (骨格材の厚みが3mmを超4mm以下) | 27年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
一般的に、金融機関で融資可能な期間の上限は「法定耐用年数-築年数」です。
例えば、築10年の重量鉄骨造の物件を、10年保有して売却しようとすると、次の買主は最長14年しかローンを組めません。
法定耐用年数を把握せず、24年保有し続けると、現金で支払いしてもらえる買主を探すしかなくなり、選択肢が狭まってしまいます。
売却を考えるときは、物件の種類と築年数から、次の買主でもローンを組みやすい耐用年数が残っているタイミングを検討しましょう。
ここまで、売却を出口とする場合に考えるべきポイントについて解説しました。
不動産投資の出口は、売却だけではありません。
少数派ではありますが、「所有し続ける」という出口もあります。
例えば、老後の収入源として、数十年後でも家賃収入を見込める新築マンションを購入する方もいます。売却を想定しないため、「新築プレミアム」がなくなり購入時から物件価値が下落することはリスクになりません。十分な家賃利益を獲得した後でも価格が下がっていなければ、売却も可能です。
老後の転居先として、人に貸さずに自宅として使用する選択肢もあります。
その場合は、出口戦略として
・継続して家賃収入を得やすい
・将来自宅として利用しやすい
・人口流入が見込める
などの条件で、物件購入を検討します。
ワンルームマンション投資の出口戦略は、物件購入から始まっています。
売却することを想定したポイントは、下記の通りです。
〈物件選びのポイント〉
・投資家の目線で選ぶ
・入居者の目線で選ぶ
・将来の人口動向を把握する
〈売却タイミングを見極めるポイント〉
・損益分岐点を知っておく
・不動産価格の変動を把握する
・法定耐用年数を知っておく
どちらのポイントを見ても、不動産相場が変動していないか、新しく駅や商業施設の建設予定がないかなど、物件周辺の情報収集を続ける必要があります。
また、相談できるプロのパートナーを早期に見つけておくことも、出口戦略のひとつです。信頼できるプロと一緒に、計画的な不動産運用を行いましょう。