投資用ワンルームマンションを検討する際、大阪と兵庫はしばしば同じ文脈で語られる。交通の便、都市規模、価格感——どれも近しい水準にある。しかし実取扱データを詳細に見ると、両者の間には見逃しにくい差が存在する。ほぼ同じ価格帯でありながら、兵庫の利回り水準は大阪を安定的に上回っている。この差の正体を理解することは、すでに兵庫に物件を保有しているオーナーにとっても、市場の構造変化を読む手がかりになる。
大阪と価格は同じ、なのに利回りが上回る
まず数字を並べてみる。大阪の平均取引価格は1,714万円、兵庫は1,705万円。差は9万円に過ぎない。坪単価も大阪232万円・兵庫224万円と、ほぼ同水準だ。ところが利回りの中央値は、大阪4.32%に対し兵庫4.47%と、0.15ポイントの差がある。さらに平均賃料は兵庫(73,313円)が大阪(71,537円)をわずかに上回っている。
この差は何を意味するのか。一言で言えば、兵庫は大阪より「坪単価に対して賃料が相対的に高い」市場構造を持っている。坪単価が大阪より8万円安い一方で、賃料は約1,800円高い。この小さな差の積み重ねが、同じ価格帯で0.15ポイントの利回り差を生んでいる。
背景には、兵庫における賃貸需要の構造がある。神戸を中心に、大阪へのアクセスを確保しつつ独自の居住魅力を持つエリアが形成されており、賃料水準の下支えが働いていると考えられる。価格は大阪並みに抑えられながら賃料が維持されやすいという、投資用物件としての構造的優位がデータに現れている。
築年数を重ねても利回りが安定している
兵庫のもう一つの特徴は、築年数が経過しても利回りの変化が比較的緩やかな点だ。
| 築年数 | 平均利回り(兵庫) | 平均利回り(大阪・参考) | 平均価格(兵庫) |
|---|---|---|---|
| 10年未満 | 4.53% | 4.30% | 1,774万円 |
| 10〜20年 | 4.49% | 4.29% | 1,717万円 |
| 20〜35年 | 5.08% | 4.83% | 1,250万円 |
築10年未満(4.53%)と築10〜20年(4.49%)の差はわずか0.04ポイント。建物が10年経過しても利回りがほとんど変わらないということは、その間の価格下落を賃料水準が補い続けていることを示している。大阪でも同様の傾向(4.30% → 4.29%)が見られるが、兵庫の方が出発点の利回り水準が高い分、保有期間を通じた収益の安定性が高い。
大阪と同じ値段で買って、大阪より高い賃料が入り、築年数が経っても利回りが崩れにくい——この構造が続く限り、兵庫は隣接エリアとの比較において相対的な優位性を保つ。問題は、この前提が今後も成立し続けるかどうかだ。
優位性が試される外部環境の変化
兵庫市場の構造的優位は、大阪との相対比較において語られるものだ。しかし、両市場を同時に押し下げる外部環境の変化に対しては、その優位性が緩衝材になるわけではない。
日銀はマイナス金利解除以降、段階的な利上げを続けており、追加利上げ観測も根強い。変動金利で兵庫の物件を保有しているオーナーにとって、利回り4.4〜4.7%という水準は、金利上昇に対するバッファとして十分とは言えない局面に差し掛かりつつある。
兵庫の賃料水準は、大阪へのアクセスという要素に一定程度依存している。大阪の不動産価格が調整局面に入った場合、賃貸需要の一部が大阪都心への回帰を起こす可能性がある。また価格帯が1,700万円前後と大阪と重なっているため、出口における買い手像も同様に変動金利の影響を受ける実需層と重複する。価格の高止まりが続く現局面は、出口としての選択肢が相対的に多い時期でもある。
インフレや金利上昇が実需層の購買力を圧迫し、都心部でも中古価格の下落と在庫積み上がりが広がりつつある。こうした変化は、大阪と価格帯が重なる兵庫市場にも遅れて波及する性質を持っている。
「大阪より有利」という前提を定期的に検証する
兵庫の物件を保有するオーナーにとって、「大阪と同水準の価格で、利回りが高い」という認識は保有継続の根拠になりやすい。しかしその優位性は、賃料水準の維持という前提に依存している。
現在の賃料・管理コスト・金利水準のもとで、収支が実際にどう推移しているかを定量的に把握しておくこと。それが、外部環境が変化したときに「継続」か「見直し」かを判断するための出発点になる。価格の高止まりが続く今は、その判断を行うための条件が相対的に整っている時期でもある。